『農事組合法人 きずな』では、奥能登の風土に育まれたおいしいコシヒカリ、能登ひかり、ひとめぼれ、カグラモチ、新大正モチを作っています。
春に乾いた田んぼに溝を掘って、種もみと肥料を播いています。直播きすることにより苗床に施す農薬が減らせます。
五月中旬に芽が出てきてから田んぼに水を張り、中干しせず、収穫の直前まで水を溜めておく事で通常通り苗を作って田植えするよりも様々な生き物がすみ易くなります。
能登半島の先端、珠洲市は三方を海に囲まれ、昔は海岸では揚げ浜式製塩が盛んでした。里山では塩を炊く薪にする塩木を運び出すため、山の手入れがされていました。また野々市区は松茸の名所でもあり、人が手を入れることで山や海の恩恵にあずかるという暮らしの知恵を伝えてきました。
大正の初めに、一区画8アールあまりの水田に区画整備がされました。高度経済成長を経て過疎・高齢化が進み大型機械化も遅れ、耕作放棄地が増加しました。他地区に先駆けて水管理しやすいパイプラインを導入しましたが、揚げ水ポンプの老朽化も進み、継続管理も困難になってきました。
厳しい米農家の状況の中、平成十二年に『荒廃する農地を少しでも守り、美田を後世に残そう』を4人のサラリーマンが立ち上がり、県の指導を受け乾田直播V字溝農法を取り入れ【農事組合法人 きずな】を設立しました。
地域の方々や石川県と共に環境との調和を図り、農地の保全を目的に経営を発展させ、平成二十二年の基盤整備完了後に約30ヘクタールの農地の管理を担っていきます。
野々江地区の田んぼにはゲンゴロウ、クロゲンゴロウ、マルコガタノゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウ等、近頃あまり見られなくなった水生昆虫がすんでいます。
ゲンゴロウは卵から幼虫の間は水中で育ち、陸に上がって土中でさなぎになり、成虫になります。その為、自然な畦や、えさとなる生き物の豊富な田んぼは恰好の生息場所となります。
農薬を控え自然に優しい米作りをすると、私たちの食卓が安全になるだけでなく、生き物たちの環境も良くなり水辺の生き物たちが元気になります。
ゲンゴロウは、自然環境の豊かさをはかるものさしでもあるのです。
平成19年度より、石川県が野々江地区のほ場整備を行い、水源・金川との水のネットワーク作りをしています。【農事組合法人 きずな】は地元の方々と協働して生き物調査や外来種アメリカザリガニの駆除等に取り組んできました。
農業を生業としながら、環境保全に取り組むためにはまだまだ沢山の課題があります。